すぐ近くにいた彼女

目の前にいる彼女が、SNS上で私が惹かれていた彼女だんて、想像もしていませんでしたので、正直最初はまったく現実感がありませんでした。 毎日のようにネット上で話をしていましたが、彼らは実在しない存在のような気がしていたのです。少なくとも、実際に会うことなんてないだろうと考えていました。

しかし、私は今、ネット上で知り合って好きになった彼女と腕を組んで歩いています。確かに彼女の体温を感じていましたし、そこに間違いなく彼女は存在していました。

「信じられない」

それが素直な私の感想でした。彼女はより強く私に腕を絡めました。そして突然立ち止まると、キスをされました。

「信じてください。私はちゃんと存在しますから。ネットの中だけの女じゃないんです」

あまりの展開に、私はただ戸惑うばかりでした。

いつから気づいていたの?

彼女に連れてこられた次のお店は、私が今日の昼食の写真をアップしたカフェでした。夜になるとおしゃれなバーに変わるお店という情報はネットで見ていましたが、実際にくるのははじめでした。

「今日のお昼、ここで食べてたでしょ?」

やはり、間違いなく目の前にいる彼女と、SNSの彼女は同一人物のようです。今日はレスはついていませんでしたが、しっかりとチェックしていたのです。

「いつから気づいてたの?」

私はSNSに個人が特定できるような情報は載せていません。年齢はそのままで登録していますが誕生日は非公開にしていますし、住んでいる地域すら非公開にしていたほどです。食事などの写真アップする際にも場所が特定できないように気をつかっていました。

「前から、なんとなくそうなのかな、って思ってはいました。だって、ランチの写真のお店、ほとんど会社の近くばかりだったでしょう?だから近くにいるのはわかっていました。はっきりと気づいたのは、その腕時計です。特徴的で、珍しい時計じゃないですか。それを買ったってアップされた翌日から、係長の時計が変わってるんですから。正直、驚いちゃいました」

左腕のミルガウスを見ると、確かに個性的です。職場でも取引先でも、時々相手の時計をチェックしてしまうようになってしまいましたが、同じものを見たことはありませんでした。

「そうだったのか。私ってわかったから、好きになったの?それとも、それよりも前から?」

気になることだらけでした。私が気づかないうちに、見られていたのですから。

「忘れちゃいました。でも、その前から気になってて、それが係長だって気づいてから抑えられなくなったのかもしれません。目の前にいるんだ、って思ったら。でも、恥ずかしいですよね。最初は係長だなんて知らずに仕事の相談なんかしてたんですから。悪口言わなくてよかった!」

冗談っぽく、彼女は笑いました。

「それを言ったら、私だって君だって知らずにアドバイスしてたんだ。なんだか恥ずかしいよ」

実際に部下の相談に乗っていたのですから、気持ちがわかったような気になるはずです。

「実際に会えたんだから、係長も私のこと好きになってくれますよね?」

確認するように、彼女は訊いてきました。私はただ頷きました。まさか、こんなことになるとは思ってもみませんでしたが、私はSNSのおかげで大きな幸せを手にいれることができたようです。

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