部下からの突然の告白

彼女から連絡がつかないまま夕方になり、退社時間になってしまいました。彼女から連絡がこないこともあって、その日はなんとなくSNSを開く気にもなれず、久々にコンビニの弁当でも買って帰ろうかな…なんて考えていると部下の一人から声をかけられました。

数年前に入社し、それと同時に私の部下になった女の子です。正直仕事はあまりできませんがとにかく真面目ですので、かなり信頼している部下でした。彼女は、上司の私からみても魅力的なくらいですので、オフィスのマドンナ的な存在になっていました。 そんな彼女が思いつめたような表情をしていましたので、私はピンときました。きっと、寿退社の申し出だ、と考えたのです。

私の会社は今時珍しいくらいに古い体質の会社で、強制しているわけではありませんが女性社員は結婚したら退社する、というのが暗黙の了解となっていました。私はそのせいでこれまでにせっかく育てた部下を何度も失ってきました。今時、結婚したら家庭にはいるなんて古い考えです。だからと言って、私なんかがそれを訴えたところで何の意味もありません。それが会社というものなんだ、と諦めていました。

彼女は私に話を聞いて欲しい、と言います。また信頼している部下を失ってしまうのか、と思うと思わずため息が出そうになります。 ですが、上司として話を聞かないわけにはいきません。そこで、私は頷いて、空いている会議室をチェックしていると、彼女はいいました。

「できれば、社内ではなく、外でお話ししたいんですが」

少し面倒だな、と思いましたが結婚、そして退職はプライベートでデリケートな問題です。なので誰にも聞かれたくないのでしょう。 そこで、会社から少し離れた個室の居酒屋へ行くことになりました。

好きな人がいるんです

彼女は少し緊張しているようですが、居酒屋のテーブルに着くと、すぐにいつも社内にいるときの様子に戻りました。 そんな表情を見ていると、数少ない信頼できる部下を失ってしまうことが本当に残念に思われます。

まずはビールとちょっとしたつまみを注文し、何に対してというわけでもなく、乾杯をしました。考えてみると、部下と飲みに行くことはありますが、二人きりになるのははじめてのことでした。

ビールを半分まで飲んだころになって、彼女はまた真剣な顔になって話を切り出しました。

「突然で申し訳ないんですが、私、好きな人がいるんです」

やはり予想通りの展開でした。結婚するから会社を辞める、という相談のようです。

「そうか!それはおめでたいな。式はいつなの?」

私のそんな言葉に対して、彼女は怪訝な顔を浮かべました。

「式って、そんな。ただ好きな人がいるだけです。式なんて」

どうやら私の思い違いのようです。ですが、ただ誰かを好きになっただけなら、わざわざ上司に相談する必要なんてないでしょう。 少し、いやな予感が頭をよぎりました。もしかすると社内の既婚者を好きになってしまった…なんて相談かもしれません。だったら、どう答えるべきかわからず、焦りました。

「私、係長のことが好きなんです」

係長…それは私でした。それは、社内には係長は何人もいますが、彼女の所属する係の係長は私しかいません。 思いがけない展開に、私は固まってしまいました。

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